こないだの話
こないだ福永武彦展(道立文学館)を見に行ったときのこと。
おばさん連れ、いや、中年女性のグループがいて、「福永武彦って小説も書いてたんだー」と言い合っていたのが、おもしろかったです。
彼女たちは、草花のスケッチで、福永を知っていたのです。
いまは「画文集 玩草亭百花譜」として、中公文庫(全3冊)になっています。(絶版かな?)
もちろん、小説だけ書いていたわけでもありません。
数多くの評論や随筆、古典の翻訳があります。
加田伶太郎名義で、ミステリーも書いています。
残念なことに、日記や創作メモなどは、字が小さすぎて、展示ケースの中にあるものは、ぜんぜん読めませんでした。
憶えのある装幀の単行本も、展示されていました。
どの本も、いまは、手元に残っていません。
福永武彦は、戦後の一時期を帯広に疎開し、中学校(現帯広柏葉高校)の英語教師をしたり、帯広療養所で闘病生活を過ごしたりしました。
長男で作家の池澤夏樹は、帯広で生まれました。
昨年、当時の日記が発見されたので、北海道に縁のある作家として、展示会が企画されたのでしょう。
帯広での生活は、厳しいものだったらしく、彼は、北海道にあまりよい印象を持っていなかったようです。
誰かが書いていましたが、雄大な自然やおいしい食べ物、ウィンタースポーツなど、そうした肯定的なイメージは、高度成長期のあと、北海道で暮らしたことのない、いわゆる「内地」の人たちが、憧れとして抱いたものだったのでしょう。
福永武彦は、1979年(昭和54年)脳出血で亡くなりました。
死の2年前、洗礼を受け、教会に通い、聖書をギリシャ語(原典)で読んだといわれています。(ウィキペディアです。笑)
享年61歳でした。