映画「ノルウェーの森」をDVDで見ました。
原作と映画作品のイメージの違いをウンヌンしても、仕方ありません。
小説は小説、映画は映画なのです。(もちろん、よい意味で)
ただ、多くの欠点を差し引いても、これは、よくできた作品だと思います。
トラン・アン・ユンというヴェトナム人監督による仕事としても、また、作品そのものとしても。
松山ケンイチを起用したのは、どうかと思いましたが、実際に見てみると、何の違和感もなく、ピッタリとハマっていることに驚きました。
直子役の菊地凜子には、少しムリがありましたが、それでも演じてしまうのは、さすがです。
というより、見る側には、選べませんから、原作の直子を忘れるよりほかありません。
緑役の水原希子は、可愛らしくて、過激で、ワガママで、謎めいた雰囲気をよく現していました。
レイコ役の霧島れいかは、きれいすぎるところが難点という、損な評価になるかもしれません。
ハツミ役の初音映莉子も、きちんとハマっていました。
と、キャスティングについても、甘い評価をしてしまうのは、日本中が知っている、大ベストセラーを、外国人監督が、日本を舞台に、日本人俳優で(当然日本語で)しかも時代背景を踏まえて、作り上げたというところが、ほとんど信じられないことだからです。
これは、この原作小説がグローバルな理解を得られる作品だという証拠なのか?
いや、映像化により、細部の微妙なニュアンスを捨象せざるを得ないものの、小説にはない、もしくは描写されていても、その枠を超えた、色と音、風景、風や雨、寒そうな暖かそうな感じ、など、目に映る事物で、イメージをふくらませることに成功したからでしょう。
小説が映画化された場合、あまたの欠落を指摘したり、上映時間の枠の中で、ないものねだりをするよりも、一歩引いて、監督が、原作をどう解釈して、映画作品として完成させたのか、そこを鑑賞するのが、見る側にとって、精神衛生がよいと思います。